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夏のレプリカ

2011年06月03日

夏のレプリカ (講談社文庫)
森 博嗣
講談社
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T大学大学院生の簑沢杜萌は、夏休みに帰省した実家で仮面の誘拐者に捕らえられた。杜萌も別の場所に拉致されていた家族も無事だったが、実家にいたはずの兄だけが、どこかへ消えてしまった。眩い光、朦朧とする意識、夏の日に起こった事件に隠された過去とは?『幻惑の死と使途』と同時期に起った事件を描く。

森博嗣S&Mシリーズ7作目。
割とネタバレ。

前作「幻惑の死と使途」の舞台の裏で起きたもう一つの事件の話。

こちらの主人公は、西之園萌絵の親友の簑沢杜萌。
久々に帰省したと思ったら、いきなり拉致られて、なぜか兄もいなくなって、…と思ったら拉致った犯人死んでた。
という謎な事件に巻き込まれる。

犯人が死んだせいで、拉致事件自体は割とあっさり終わる。
ただ、犯人が殺された謎については未解決のまま。
WhoとHowとWhyが謎。

そんな状態で、事件が解決しないまま終盤まで行く。
肝心の萌絵は、向こうの事件で忙しくてそれどころじゃないんだよオーラを纏ってあまり絡まない。
萌絵が絡まないと当然犀川も絡まない。

そんなわけで若干中だるみ的な感じで終盤を迎えて、当然のごとく事件は解決される。
でも、そこで判明するのはWhoだけで、HowとWhyは謎のまま。

「幻惑の死と使途」では犯人と犯行に加えて、珍しく動機までもしっかり書かれていたのに、今作では犯人しか分からない。
ついでに、消えた兄の事件も曖昧なまま終わる…と思いきや、衝撃のラスト的な一面を見せつつ、結局曖昧なままで終わるという有様。

一言で言えば、事件は何も解決していない。
ただ犯人が分かっただけ。

「幻惑の死と使途」と対照的な書かれ方をしているのが、作者の意図なのかどうかは分からないけれど、ラストくらいはもう少ししっかり書いてくれても良かったんじゃないかなと思う。

とか言いつつも、なんだかんだで今作は結構面白かった。
どこがと問われると答えに困るけど、まぁ本の印象なんて大体そんなもんですよね。

ところで、後半あたりに犀川が「名前が逆だった」みたいなことを言うんだけど、
これは今作の謎解きとは全く無関係で、実は「幻惑の死と使途」のヒントになっているらしい。
読み終わっても何のことか全く分からないから、ネットで調べるよね。

「幻惑の死と使途」の犯人が、とある人物の名前を逆にした名前になっているという仕掛け。
こんなところで2作品が絡むとは思わなかった。
でも、普通は「幻惑の死と使途」を先に読むだろうから、2周しない限り分からない気がする。

前作との絡みという点ではそんなところくらいしか無かった。
結末もあんなだったし、すっきり綺麗にまとまって終わるのを期待したけどそうはならなかった。

評価:★★★★☆ 4.5


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