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今はもうない

2011年06月18日

今はもうない (講談社文庫)
森 博嗣
講談社
売り上げランキング: 120258
避暑地にある別荘で、美人姉妹が隣り合わせた部屋で一人ずつ死体となって発見された。二つの部屋は、映写室と鑑賞室で、いずれも密室状態。遺体が発見されたときスクリーンには、まだ映画が…。おりしも嵐が襲い、電話さえ通じなくなる。S&Mシリーズナンバーワンに挙げる声も多い清冽な森ミステリィ。

はい、S&Mシリーズ8作目。

この作品を読む予定の方は以下読まない方が良いと思います。

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ついに森博嗣作品にも「奴」が来ましたよ。
そう、叙述トリック。
それを言っただけで完全なネタバレになるほどの威力を持ったこの言葉。

正直、森博嗣作品でそれが来るとは思ってなかったから、油断してた。
でもね、読んでて明らかに違和感を感じてた。

まず、今作は今までと違って、地の文が笹木という新キャラ(?)の手記的な書かれ方になってる。
いつもは第三者視点だからそこが明らかに違う。
そして、章の途中途中に萌絵と犀川先生の会話が挟まって、こんな話があったんだっていう体験談を犀川先生に聞かせる形式で進んでいく。
正確には、別荘であった事件について話しているだけで、萌絵が体験したとは一言も言っていない。(言ってたら叙述トリックにならない)
でも、普通に考えたら萌絵の体験談としか思えない。

途中、違和感を感じたのは、萌絵が体験したにしては時期がおかしいところ。
S&Mシリーズは一応時系列に繋がってるし、萌絵と犀川先生の会話自体は前作からしてもそこまで時間は経過してない感じがする。

叙述トリックかな?とも一瞬思った。
それでも、話中で西之園と名乗ってるし、性格的にも萌絵以外あり得ないと思った。
寧ろ笹木を疑った。
存在として一番怪しかったから。

中盤に、「西之園」の下の名前を当てようっていうゲームが笹木との間で行われて、漢字2文字でイニシャルがM.Nとまで言ってる。
ここまで言われたら疑いようもなく萌絵だと思うのが普通。
このゲームは完全に読者をだますためだけに仕込まれてる。

笹木手記の最後の一文が無ければ、結論が曖昧過ぎる中途半端な密室殺人のミステリで終わってた。
でも実は、その密室殺人はおまけで、叙述トリックこそが今作の肝だった。

結局、西之園萌絵だと思わせていた人物は、叔母の佐々木睦子(西之園睦子)で、新キャラの笹木の本名は佐々木だったというオチ。(西之園睦子は後に佐々木と結婚してる)
確かに父方の叔母だから旧姓は西之園だと分かるし、前作までに登場してる叔母の名字が佐々木であることも判明してる。
気づく要素はちゃんとあったからアンフェアでは無かった。

さらに上手いのが、前作までで叙述トリックで読者をだます為の用意をしていること。
今作の睦子は、叔母と喧嘩して自分の別荘から飛び出してきて笹木と出会ったという設定になっている。
萌絵の方も叔母と仲が悪いことが前作までで判明してるし、シリーズを創刊順に読んでいれば話の流れもばっちり合う。
作者はちゃんと伏線を敷いていた。
しかも通常とは逆の意味で。

正直、笹木手記の密室ミステリはそこまで面白くもなくて、笹木自体のキャラもあんまり好きではなかった。
でも、作品全体が叙述トリックになってることで、そんなのどうでも良くなった。
叙述トリックはミステリの中でも嫌いな部類だけど、この作品のやり方はなかなか上手いと思ったし、それほど不快でもなかった。
あ、でも、もう叙述トリックは終わりにしてください。

評価:★★★★☆ 4.5

密室殺人の方がもう少し面白ければ文句なし。

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