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折れた竜骨上・下

2014年02月02日

米澤穂信さんの長編小説。
2012年の「このミステリーがすごい!」で2位、「本格ミステリ・ベスト10」で1位の作品。

自然の要塞であったはずの島で、偉大なるソロンの領主は暗殺騎士の魔術に斃れた。“走狗”候補の八人の容疑者、沈められた封印の鐘、塔上の牢から忽然と消えた不死の青年―そして、甦った「呪われたデーン人」の襲来はいつ?魔術や呪いが跋扈する世界の中で、推理の力は果たして真相に辿り着くことができるのか?第64回日本推理作家協会賞を受賞した、瞠目の本格推理巨編。

中世ヨーロッパが舞台のファンタジー要素のあるミステリ作品。

はっきり言って何でもありなファンタジーはちょっと苦手なんだけど、この作品は魔法とか不死とかファンタジー要素を取り入れつつも、ちゃんとルールを設定してミステリとして成り立たせてる。

あと、登場人物が多いことと、人名がカタカナなのは物凄く嫌いなんだけど、何故かこの作品はそれでも読みやすく、かつそれぞれの登場人物が割と頭に入って来やすい。
大抵の作品だと誰が誰だか分からなくなって、登場人物欄を何度も何度も見直さなきゃいけないんだけど、そこまでしなくても大体話が分かるって言うのが良かった。

肝心のミステリは、殺された領主の犯人捜しで、容疑者は完全にこの中にいるって明言されている状態。
犯行現場はクローズドサークルっぽいけど、そこまで完全なクローズドサークルでもなくて、それを破る方法があることをほのめかしてる。
決められた容疑者の中で、かつ、抜け道を通って(もしくは通らずに)領主を殺したのは誰かを推理する。

前編は、世界とか人物の説明をしつつ、状況説明とか推理の進行がメイン。
後編は、デーン人による襲撃からのバトルシーンで盛り上がって、それが終結したあとに、推理の披露と犯人特定。

古典部シリーズとか小市民シリーズなんかの日常ミステリを書く作者が、こんなバトルシーンも書くんだっていうのでちょっと驚きつつも、かなり楽しみながらどんどん読める。
(インシテミルではそういう描写もあるけど、個人的には日常系の方が印象が強い)

そして、随所にちりばめられた犯人特定のためのヒントが、最後できちっと説明されているから、ああなるほどって納得できる。
ちゃんと読者にヒントを分かりやすい形で与えてる親切設計。
確かに書いてあるけどちょっとそれはどうなの?ってミステリもたまにあるからね。

結末は結構意外というか、そう来たかーって感じでミステリとしての面白さもなかなか。
容疑者は8人くらいで絞られてはいたけど、この辺の人が犯人だったらあんまり面白くはないよなーっていうのは読んでて思った。
でも予想してなかった犯人だったから、そっちか!っていうのが正直な感想。

そんな感じで、ファンタジーチックな中世ヨーロッパのミステリだったけれど、期待以上に面白くてサクサク読めて、後味も良かった。
久々にヒットなミステリだったと思う。

評価:★★★★★ 5.0


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