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真夏の方程式

2013年07月15日

真夏の方程式 (文春文庫)
東野 圭吾
文藝春秋 (2013-05-10)
売り上げランキング: 51

容疑者xの献身に続き、ガリレオシリーズの映画第2弾ということで、真夏の方程式の原作を読んだ。

夏休みを玻璃ヶ浦にある伯母一家経営の旅館で過ごすことになった少年・恭平。一方、仕事で訪れた湯川も、その宿に宿泊することになった。翌朝、もう1人の宿泊客が死体で見つかった。その客は元刑事で、かつて玻璃ヶ浦に縁のある男を逮捕したことがあったという。これは事故か、殺人か。湯川が気づいてしまった真相とは―。

容疑者xの献身も最近のガリレオシリーズのドラマもそうだけど、湯川学が登場するからと行ってトリックが全て物理的なものとは限らない。
というか、ガリレオシリーズは物理的なトリックが特徴だったと思ってたんだけど、どうも路線がずれている気がする。
とはいっても、キャラクターの安定感があるし、ミステリとして面白ければそれはそれで良い。

今作は、玻璃ヶ浦の殺人と、16年前の荻窪での殺人をリンクさせているところがポイント。
荻窪の方は、玻璃ヶ浦の事件とどう関係しているのかなかなか見えてこなくて、若干中だるみに感じる部分もあった。
最後まで読めば、ああなるほどとなるんだけど、荻窪事件は無理矢理つなげた感じにも思える。

トリックに重きを置いたと言うよりは、人間の情をメインに書かれてる。
その点では容疑者xの献身と非常に似ている部分がある。
ただし、容疑者xはトリック自体も精巧に出来ていたので、ミステリの質としては容疑者xの方が完全に上。

今作がミステリとしていまいちなのは、トリックに奇抜さがないところと、2つの事件の犯人の動機が曖昧なところ。

容疑者xは倒叙形式で犯人が分かっているのに警察が犯人を一向に見破れないところに面白さがあった。
今作は途中で犯人が自首するけれど、本当のところは違って、最後の最後でどんでん返しが来るよ!っていうのを期待していたけど、そんな展開にはならなかった。

動機に関しては、玻璃ヶ浦事件も荻窪事件も、どちらも殺すほどの理由がない。
人を殺すにはやっぱりそれなりの理由がないと殺された方は溜まったもんじゃないよね。
「ついかっとなってやった」に近い何かを感じた。

全体的にみると、ちゃんとまとまっていて終わり方も悪くは無い。
荻窪事件との繋がりをもう少し強くできていたら良かったのかなとも思う。

湯川教授はいつもより人間らしく描かれていて、言い方を変えると湯川らしくないんだけれど、それはそれでまた良いと思うし、容疑者xに近い何かを感じた。

評価:★★★★ 4.0

ちなみに映画はまだ見ていないんだけど、キャストがちょっといまいちな気がする。
内海薫(柴咲コウ)の代わりに岸本美砂(吉高由里子)が入るのは、ドラマとの流れで問題ない。
で、何で川畑成美役が杏なのか。
作中では誰もが惚れる美女的な扱いをされていたのに、その役に杏を入れるの?

や、実際に見てみたら意外にしっくり来るということも往々にしてあるのであまり大きなことは言えないけれど、見る前の印象としてはちょっと合わない気がしてる。
そのあたりも含めて、映画を期待して見てみようかな。


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